組織的なプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を立ち上げるにはどうすればいいか、効率的な立上げ方法とは。
今回は、PMOの組織を立ち上げた自分の経験も踏まえて、PMOを立ち上げる方法、効率的な立上げ方について書いています。
そもそもPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)なんて必要あるの?
と疑問に思われるかも知れませんが、社内にトラブルプロジェクトが発生しているのであれば、PMOを設立することでトラブルを減らせるはずです。
実際、プロジェクトにPMOのレビューを導入すると、それまで年間5~6件発生していたトラブル赤字プロジェクトが、ゼロ件になりました。
PMOを立ち上げる理由
PMOの役割
PMOはいくつかのパターンや役割がありますが、今回のPMOは、会社・または組織内で、複数プロジェクトに対しての支援をおこなうチームという意味です。
主な役割は、プロジェクトのレビューにより、プロジェクトの実施にあたっての課題とリスクを洗い出し、プロジェクトを進めるか否かの判断支援をすることです。
プロジェクトマネージャー「お客様が、ぜひうちに、と言ってくれています。納期は短いですが、成功すれば今後も継続発注が期待できます」
部長(決裁者)「そうか、おまえがそういうなら」
PMO「プロジェクト計画を確認しましたが、規模に対して納期が短納期すぎます。また、要員計画、スケジュールが未定で、リスクも洗い出せていません。お客様の予算も確保できるかどうか。
納期・品質・コスト、すべてにリスクがありますので、これこれこのような対応をとり、プロジェクト計画を至急見直しが必要です」
プロジェクトに対して、客観的な視点で判断することにより、プロジェクト実施にプラスになるアドバイスができれば、組織的なプロジェクト推進力は格段にあがります。
PMOを設置する効果
プロジェクトをプロジェクトマネージャーが一人で決めてすすめることになると、そのプロマネの力量、見える範囲により問題が適切に洗い出せていないことがあります。
特に現場の人間関係や本人の評価などを意識して、客観的な判断ができないことはよくあります。
上司がそれをしっかりみて判断できるのであれば問題ありませんが、組織をみている決裁者だと、プロジェクトだけをやっているわけではない、プロジェクトマネージャーの経験者ではない等、必ずしも正しい判断ができない可能性もあります。
そのため、そのプロジェクトのラインからはずれた、PMOを置くことが効果につながるのです。
下記に示すような効果があります。
・プロジェクトの状況に対して客観的な意見の提示(意思決定支援)
・プロジェクトの課題に対して実施すべきことの提案(プロジェクト推進支援、トラブル軽減)
・プロジェクトのリスク提示(トラブル軽減)
PMOを立ち上げる
大々的に立ち上げるより前に、プロジェクトマネージャーの経験がある人材を、決裁事前のプロジェクト計画書のレビューアーとしてアサインすることをおすすめします。
専任組織として設立するのではなく、PMOを設置する組織付きの補佐役として任命し、その役割を組織内に浸透させるだけで、即日でもPMOを立ち上げることができます。
PMO立上げで重要なこと
ここで重要になることは、3点です。
・トップマネジメントのPMOに対する権威付け
・PMOメンバーの人選
・PMOメンバーは、プロジェクトが成功するための支援であって単なる指摘ではないことの徹底
大抵のプロジェクトマネージャーは、自分のプロジェクトに対して横から口をだされることを嫌います。
組織トップからの徹底した役割付けが、PMOを機能させるか否かの分かれ道になります。
ただし、PMOメンバーの人選(一人である必要はありません)は、重要なポイントです。
・プロジェクトの計画を見て、有益な指摘が可能であること。
・プロジェクトをけん引した実績があり、周囲に認められていること(この人が言うのであれば)
その人であれば、プロジェクトに対して、有益な提案ができることが大事な条件になります。
・PMO支援は、課題の指摘ではなくて、どのようにすればいいかまで提案する役割です。
単なる指摘だけでは、おそらく嫌われて機能しなくなって終了になります。
PMOを立ち上げるための困難
実際問題としては、PMO立上げには下記の問題があります。
・PMOの対応が可能なメンバーが組織内・社内に不在
・PMOレビュー可能な人材の工数が確保できない
・PMOノウハウを蓄積する余裕がない
・PMOの優秀な人材をずっとはりつけてはおけないが、ローテーションする人材もいない。
これは、いつでも発生しうる問題です。
ただプロジェクトを実施し、PMOを設置しようと検討するような企業であれば、忙しいメンバーかも知れませんが、誰か適切なメンバーがいるはずです。
あとは、マネジメント層の判断のみ。
それでもなかなか適任者をアサインできない場合には、外部コンサルなどの利用も一つの選択肢ではあると思います。
PMOを立ち上げよう
プロジェクトは、プロジェクトマネージャーの責任で推進するにしても、そこに丸投げするものではなく、PMOが組織的な支援をすることで会社としてプロジェクトを推進している体制がつくれます。
立上げに困難はあるかもしれませんが、問題プロジェクトが発生する場合には、組織横断型のPMOの設置は、解決策の一つになります。
PMO立上げで実施すること
PMOで実施すること
僕が実際にPMOの設立をしたときにやったことを書いておきます。
専任組織としての立上げの場合なので、部長補佐とか社長補佐で実施する場合には、まずは工数の確保からです。
組織立上げのための社内調整の話ではなく、あくまでもPMOとしての業務中心に述べます。
・PMOのレビュープロセス、運用、レビュー基準を定義
・プロジェクトの局面(要件、設計、製作、立上げ)の完了基準・チェックリストの作成
・プロジェクトの状況の見える化のための仕組みづくり(月次報告のPMO提出)
・プロジェクトを視える化して、PMOの判断つきで上位展開
・社内のプロジェクトの情報収集(開発標準、ガイド、ツール類)
・プロジェクト計画書のひな型作成
・プロジェクト情報収集の仕組みづくり
PMO立上げというか、立上げ後もしばらくの間は、運用の見直しや強化を実施していました。
実際のPMOの業務としては、各プロジェクトのプロマネと調整して、レビュー調整しレビューを実施。
月次報告をもとに、上位報告用の資料を作成、資料報告(上位といっていますが、会社横断PMOだったので、経営会議展開)
PMOは、単なる指摘ではなく、いかに提案できるかがポイントだと思います。
また、PMOを実施したことで、社内各部署のプロジェクトマネージャやリーダー、技術者と知り合い、社内人脈が一気に膨れ上がりました。
自分はその後、PMOから実プロジェクトのプロジェクトマネージャーにもどりましたが、社内人脈は、困ったときに逆に助けてもらうとかにもつながり、自分にとっても、会社としても(プロジェクトの成功につながるので)大きなプラスになりました。
PMOの設置は、いろいろな意味でプラスになるものだと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後もプロジェクトマネジメント、問題解決などの仕事一般で役に立つ情報発信を心がけていきます。
宜しくお願い致します。