今回もフェルミ推定を取り上げます。
前回は「日本全国にコンビニエンスストアは何店舗あるか?」という問題を例に、いくつかのパターンで推論を展開しましたが、今回はフェルミ推定を使い場合に問題解決で重要となる基本的な考え方を示します。
フェルミ推定は、一見してわからないことに対して回答を導き出すには有効で、コンサルティング会社の面接ではよくつかわれているし、ビジネスでも応用がきくものですので、身につけておいて損はないと思います。
フェルミ推定とは何かを知るには、前回のフェルミ推定を説明する前回の記事もあわせてご覧ください。
フェルミ推定の基本的な考え方
フェルミ推定は、さまざまな課題に一定の回答を出すのに役だちますが、ここでいう課題とはどのようなものを指すのでしょうか。
一言で言ってしまえば、「大きすぎて把握しきれないものや、細かすぎてよくわからないもの」に対して、既存の知識(あなたの中にある知識)で回答を導き出す方法です。
ひとつ例題をみてみます。
「今現在、世界中で寝ている人は何人いるか?」
例えば、人間は8時間睡眠、地球の人口が70億人で、地球上の人間の分布は一様と仮定します。
地球の公転周期は、24時間、そのうちの1/3(8時間)が寝ているので、
現在寝ている人=70億×1/3=約23億人
になります。
上記は単純な計算で導き出せる例でした。
問題によっては、より全体を把握しきれず、複雑な計算をする必要がでたりします。
例えば、あなたが住んでいる近所にあるコンビニの数はだいたい想像がついても、日本全国のコンビニエンスストアの店舗数と問われると、感覚的につかめず、脳裏にクエスチョンマークがたくさん並ぶことになります。
そんなときに、推定の力で答えを導き出すことができます。
逆に細かすぎてわからないとは、例えば、1日に映画に行く回数は何回ですか?ときかれても明快な答えをすることは難しいかもしれませんが、1年間の間に映画に行く回数は何回ですか?と聞かれれば、想定はしやすいと思います。
このように、細かいものをまとめてしまうことで答えを導き出して、答えがでたあとに細かくすることで求められている解答と導き出すという場合も使います。
さて、このような、容易に想定ができない問題の答えを出すために役立つ解答方法とはどのようなものなのでしょうか。
フェルミ推定の基本的な考え方
基本的な考え方は「項目の分類と細分化/統合化」になります。
前回解答例をしめした、日本全国のコンビニエンスストアの数を例にしてみます。
前回、これはこのように解答しました。
・日本の総面積は、38万平方キロメートル
・日本を都市、田舎、山村に分類
・都市、田舎、山村のそれぞれの割合を想定(全部で100%になるようにする)
・日本全国を1平方キロメートルに小さく分解
・分類した区分(都市、田舎、山村)単位に分解した1平方キロメートル単位にコンビニの数を推定
・計算
都市のコンビニ数=日本総面積×都市の割合×都市1平方キロメートルあたりのコンビニ数
田舎のコンビニ数=日本総面積×田舎の割合×田舎1平方キロメートルあたりのコンビニ数
山村のコンビニ数=日本総面積×山村の割合×山村1平方キロメートルあたりのコンビニ数
全国のコンビニ数=都市のコンビニ数+田舎のコンビニ数+山村のコンビニ数
ポイントは、全国といわれると想像できないため、1平方キロメートルという面積に分解したこと。
あわせて、コンビニ数は、都市と田舎では異なるため、異なるカテゴリーに分類して、そのカテゴリー毎の数を算出したこと、になります。
なお、分類は、全体の数を出すことを考えると、抜け漏れがない(MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive-ミーシー)である必要があります。
参考
Mutually(お互いに)
Exclusive(重複せず)
Collectively(全体に)
Exhaustive(漏れがない)
MECEは、ロジカルシンキングの基本の考え方で、分類するときによく使います。
冒頭にあげた例題だと、寝ている人/寝ていない人 で分類したし、次の問題では、都市/田舎/山村 で分類しました。
フェルミ推定でも、男女で分類したり、年齢層で分類したりと、より正確な答えを導き出すために、この考え方は頻繁につかいます。
問題解決で重要な考え方
全体的(網羅的)に捉える
先のMECEに通じますが、問題解決で重要になってくるのは、全体を網羅的に把握することです。
木を見て森を見ずにならないように、大きく全体をとらえることは、問題解決やものごとを企画するためには大切なことです。
トヨタ式の問題解決でも対象を全体で俯瞰的にとらえたうえで、問題を具体的に絞り込みます。
また、A3一枚に記述するのも、全体を見渡せるようにする意味合いもおおいにあります。
単純化(一般化・平均化・抽象化)して考える
推定して解答を導き出すためには、単純化することは必要になります。
例えば、日本の面積を出すときに、細かく測定するのではなく、全体として細長い長方形と考えて、縦×横 で概算してしまう。
今寝ている人を算出する際、夜でも起きている人がいるとか、3時間しか寝てない人がいるとかそういうことは概算上は考えず、単純なモデルで考えるとか、です。
例外は確かにありますが、限られた時間内に近似値を算出するには、平均的なことを想定して単純化することは必要です。
以上の、全体的に考える、単純に考えるは、フェルミ推定を適用していくうえでの重要な考え方になります。
問題解決では、あわせて下記の考え方も重要になります。
目的を考える
個々の細かなものを積み上げるのではなく、最終目的となるあるべき姿とのギャップを問題ととらえるのは、本質的な問題を想定するのに役に立つ考え方になります。
常に目的に立ち返ることは、会社の発展には欠かせないことになります。
具体的な問題を把握分析する
現実の問題解決を考えた場合には、特殊な部分をみて部分の最適化をしていく必要もあります。
現実の具体的な問題を、細かく調べてその中から課題をみつけて改善していける部分は改善していく、というのも問題解決としては重要になります。
まとめ
抽象化した考え方で問題をとらえて、全体最適につながる抜本的な改革も変化が激しい時代には必要です。
あわせて、現場に即して具体的な事象をしっかりとらえ、地道な改善を続けていくことを実施することが個人や会社の問題を解決し成長につながっていきます。
全体を把握した改革要素を含む全体最適と、具体的な事象を細かくみて問題点を改善していく部分最適の両輪をまわしていくことを、忘れないようにしたいです。
問題解決について
問題解決技法を、あなたの問題、あなたの会社の問題に適用してみませんか。
これまでの自分の経験をもとに、各種問題解決に対するコンサル、ご支援、問題解決を会社に定着させるお手伝いなどを実施しております。
もしお困りの時、興味がわいた時には一度ご相談ください。下記にリンクも貼っておきます。