トヨタ系のIT企業で20年以上勤務しました。その中では、資料を紙一枚に書くことを徹底して叩き込まれました。
通常の会議だとA4一枚で書くし、問題解決に取り組む時には、本腰をいれてA3一枚にまとめます。
今回は、その問題解決の時につかう、A3一枚で書くフォーマットとその記載内容について説明いたします。
問題解決のフォーマット(A3)
まずは、A3フォーマットをご覧ください。
マイクロソフトのエクセルのシートでもパワーポイントでも作成するツールは特にこだわりがありません。トヨタでは、MSのOffice製品を使っていましたので、僕はEXCELで作成することが多かったですが、PowerPointが得意な人はPowerPointで作っていました。
大切なのは、一枚で書くということです。
問題解決の手順については、他でも述べていますが、トヨタが使っている問題解決、8ステップの手順はおおよそ下記のものになります。
[1]問題発見→[2]現状把握→[3]目標設定→[4]真因分析→[5]対策立案→[6]対策実施→[7]結果評価→[8]定着展開
A3資料はこの内容を1枚で記述するようになっています。
実際の内容の記載の考え方は、こちらを参考にどうぞ。
多くの方にお伝えできるようにダイエットを例にして考えてみたものです。
ダイエットへの挑戦(1)【トヨタ式問題解決手法でダイエット】
ダイエットへの挑戦(2)【トヨタ式問題解決手法でダイエット】
各項目への記載内容は後述しますが、なぜ紙1枚で記述するのでしょうか?
紙1枚に書くことで、全体を一瞥できて短時間で、その内容を把握できるからです。
会議の場にその資料を持ち込むことで、出席者全員で情報を共有し、意見を出し合うこともできます。
情報共有がうまくはかれれば、意思統一、結論がでるまでの時間は短くて済みます。
僕は長年のトヨタ系企業でお世話になる中で、紙1枚のパターンを自分なりに整理してもっていました。
先に示したA3のフォーマットもそのうちの1つになります。
それも含めて、例えば下記のような各業務に対しての1枚でのフォーマットを自分なりにもっていて、その形で表現することで資料作成の効率化をはかっていました。
ご参考:「じぶん資料フォーマット」をもっていたもの
・問題解決 : A3
・業務提案 : A4
・システム企画 : A3
・研究企画 : A3
・プロジェクト完了報告 : A3
・プロジェクト進捗報告 : A3/A4
・ロードマップ : A3/A4
・製品比較評価 : A3/A4
みずからの仕事の流れの形をつくって、資料作成・企画実施などをすることは、働き方改革、効率化にもつながります。
あなたの業務にあわせた仕事の「じぶん資料フォーマット」を是非つくってみてください。
資料の各項目の記載内容
ここからは、実際のA3資料の各項目(1つ1つの箱の中)に書く内容について説明します。
【テーマ】
A3資料のテーマ、資料のタイトルを資料のはじめに記述します。
今回は問題解決なので、問題は何を解決するかのテーマを記載します。
解決するテーマは、認識している問題に対して、何をテーマとして取り組んでいくかということになります。
例えば、製品をつくっている会社が、品質が悪いことを問題としてとらえ、品質向上を狙いとするのであれば、
テーマは「製品品質の向上」になるでしょうし、システム開発をしている会社が、生産性が悪くてこまっているのであれば、「システム開発の生産性向上」がテーマになるかもしれません。
問題解決のA3ということを考えれば、実際に適用したその結果がタイトルにはなりません。
例1(×)「「●●プロジェクト―テスト効率化ツール適用によるテスト生産性3倍アップ」
例2(〇)「●●プロジェクト立上げに向けたテスト生産性向上への取り組み」
最終的に例1のタイトルにしている場合ことはよく見かけましたが、問題解決を始める前に、その手段から決めてしまっていると問題解決そのものの範囲を限定してしまうことになります。
まずは、A3資料の左側、現状の把握から目標設定までをしっかり行うことを考えて、手段ではなく、上の例だと「生産性向上」などの今回の問題解決の目的をテーマとして記述しておきます。
【問題発見】
A3のスタートはここになります。
左上のここには、この資料の発端となった問題意識、問題発見に至る背景を記述します。
普段自分たちが問題認識していることを記載していきますが、あるべき姿とのギャップを問題ととらえ、あるべき姿との対比で記載します。
また、これから書く資料の前提となる説明、会社、組織やチーム、本人などの役割や立場、過去の経緯なども記載内容の理解に必要な情報であれば端的に記載します。
問題の発見の方法については、下記の記事に記載してありますのでご参考に。
問題がわからないときに【トヨタで学んだ問題発見スキルの極意】
【現状把握】
A3左側のメインで資料全体でも重要な位置をしめるのが、この現状把握になります。
問題をつきつめて、最も問題となっているのは「どこ」なのかを特定する、「どこどこ分析」を行います。
品質が悪いのであれば、例えば10ある製品のどの製品、その製品でつかっているどこの部品、その部品のどの部分。
というように悪い場所を特定していきます。
絞り込みは、その箇所だけではなく、その製品製造しているラインのどのプロセスで品質の低下するものが作りこまれているかなども特定していきます。
本来は、製造業であるトヨタの問題解決なので製造業では適用しやすいのですが、さまざまな業務に適用可能です。
ちなみに自分はIT系でシステム開発や導入、そのプロジェクトマネジメントなどを行ってきてますが、問題なく適用できていました。
【目標設定】
先に現状を把握して、どこに問題があるか判明したら、その特定された問題を、いつまでに、どこまで解決するかを定義します。
目標ですので、「いつまで」という時期を明確に設定します。
かつ、達成できたかできなかったかを具体的に評価もできるように、具体的な数値で目標値を設定します。
生産性10%向上(1か月で●●時間の作業時間を減らす)とかです。
ここで具体的な数字を設定しておけば、評価を明確、簡単に行うことができます。
さて限られた期間の中で効率的に問題を解決する必要がるのに、何を目標に設定するか悩むケースがあるかもしれません。
問題が複数見つかった場合、目標を設定する際に最も効率的な目標設定するために考慮すべき点として、重要度・緊急度・拡大傾向というのがあります。
・重要度
・緊急度
・拡大傾向
重要度とは、問題が影響する範囲とその大きさになります。
複数の製品で問題が発生している場合は、あるひとつの製品で発生している場合より重要度が大きいと言えます。
緊急度とは、問題が悪化する度合いになります。手を打つのが遅れて時間がたてばたつほど問題が広がったり、お客様が利用するシステムで大至急対応が必要な場合などは緊急度が高いといえます。
拡大傾向とは、問題の影響がおよぼす範囲です。例えば特定の部署内で使用しているシステムより、全社で使用しているシステムの方が、拡大する傾向が高いというように考えます。
【真因分析】
問題の真因を追及するために、「なぜなぜ分析」を行います。
問題がわかったら、それを修正して終わりではなく真の原因を探って対応するために、なぜその問題が発生したのかを追究するのです。
例えば、お客さんからクレームがあって、ある製品に問題(不具合)が見つかったとします。
その不具合を直したら完了でしょうか?
真因の分析では、なぜその問題が発生したかを追究するのです。
その問題がおきている場所をみていくと、その製品を製造する機械のあるネジがゆるんでいて、何パーセントかの不具合が発生するようになっていたのかも知れません。
目の前の問題だけに対処して終わりにすると、同じ問題が再発するリスクが高いですが、真因をつきつめて対応すれば、問題は発生しなくなります。
臭いにおいはもとからたたなきゃダメ、ということですね。
その追及が、「なぜなぜ分析」で、なぜなぜは5回繰り返す、といわれているものです。
もっとも、あまりこれをやりすぎると、
「これこれこうだからです」
「なぜだ」
「それはこうだから」
「なぜ?」
「だから、こうなので」
「なんでだ!」
嫌なやつになるので、気をつける必要はありそうです。
【対策立案】
真因分析の裏返しが対策立案なので、真因までしっかりと分析できていれば、対策の立案そのものは、そこまで苦労はしません。
上の例だと、製造機械のネジが緩んでいるのがり真因だとすると、対策としては、そのネジを締めればいい、という具合になりますね。
ただ、対策の立案では、立場により自分でできるものなのか、周囲を巻き込んでやるべきものなのか、それとも手が打てないものなのかの分類は必要になります。
その上で、対策として実施するかしないかを決めて、実施することになったものに対して、必要に応じて周囲を巻き込みながら対策を実施していくことになります。
対策立案の際に考慮すべきは、その対策を打つことで確かに既に設定している目標がクリアできる、という目途づけです。
設定した目標がクリアできない対策の場合、他の対策をうつ必要がでてきます。
評価して将来の改善につないでいくためにも、対策の効果予測も実施したほうがベターです。
【実施評価】
先に立案した対策を個人、チーム、周囲を巻き込むなどしながら実施していき、目標達成を目指します。
実施していくなかで課題が発生する場合もありますが、必要に応じてちいさな問題解決を繰り返しながら対策を遂行します。
最終的にできたかできなかったかは、目標値を数値で表現できていれば、評価は難しくないと思います。
目標を達成できない、評価が〇ではないケースも発生しますが、重要なのは評価ではなく、そこで終わらせずにいかに改善をつづけるかになります。
【課題展開】
評価して終わりではなく、最後に残課題を整理し、今後の対応、実施についても記載します。
目標を達成できなかった場合には、課題は残っているということだし、期間内での目標が達成できていたとしても、最終目的に向かってはまだ残課題があるのであれば、その残課題への今後の対応についてここで触れておきます。
また、今回の問題解決が、他でも適用できるもの、他でも検討すべき内容であれば、横に広げて展開することも考慮していきます。
そうすることによって、改善はひとつの対応事例にとどまらず、組織・会社全体に浸透することになるからです。
問題解決について
これまでの自分の経験をもとに、各種問題解決に対するコンサル、ご支援、問題解決を会社に定着させるお手伝いなどを実施しております。
もしお困りの時、興味がわいた時には一度、下記リンク先からご相談ください。