問題解決のやり方のひとつに、フェルミ推定というものがあります。
ノーベル物理学所を受賞したこともある、エンリコ・フェルミという物理学者が、得意としていたということから、フェルミ推定と言われています。
コンサルタント会社の面接問題としてもつかわれたりするし、実際のビジネスでも応用が利く方法です。
トヨタ式の問題解決のように、業務を分析して改善をしていくというよりは、あるわからないことに対して、前提をおき仮説を立てて答えを出すことに使えます。
わからないことに仮に答えを出すには極めて効果的な方法なので、今回は問題解決の一環で、フェルミ推定をとりあげてみます。
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、自分の記憶している知識の範囲になく、簡単に想像できないような問題にたいして推論で答えをだす方法です。
先ほど話にでた、フェルミが自分の講義で学生に出した問題は、「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」だったといわれています。
フェルミ推定では、他にもいくつか、有名な問題をあげてみます。
「日本にある電柱の数は何本か?」
「今地球上で何人の人が寝ているか?」
「地球上にアリは何匹いるのか?」
などなど、一見してどう答えればいいのかわからないものを、知っている範囲の知識から導きだすというものです。
例えば、簡単な例題だと、「日本に男性は何人いるか?」 でもある種、フェルミ推定の問題です。
日本の人口が、1.2億人というのを知っているとして、男女比が50:50とおくと、6000万人ですね。
ここで、正確には・・・とか、最近は男でも女でもない中性の人間がいるし、とか言い出すのはフェルミ推定の本質ではありません。ある仮定の下、一定の時間内に結論をだしてしまう。
面接の問題ならもちろんですが、一般的なビジネスで仮説をたてるときにも、必要になるスキルです。
日本の男性の数は簡単すぎましたので、身近にあるもので別の問題を考えてみました。
「日本全国にコンビニエンスストアは何店舗あるか?」
さて、どうやって導き出すかです。
回答例の一つとして、日本の面積から導いてみます。
日本全国の面積が、約38平方キロメートル、これを使います。
ここで想定されるのが、地域・場所によってコンビニの数が異なるということです。
まず、日本は山間部もあり、ほぼ人が住んでいない地域の方が多そうです。
山間部が7割程度あると仮定します。大都市圏でも人口が密集している地域は、日本全国で考えたら1割はなさそうなので5%、残りの25%は田舎町と想定します。
都市部:5%
田舎町:25%
山間部:70%
人口が密集している地域には1キロ四方くらいに2件くらいは平均コンビニがありそうです。
田舎町は、5キロくらい離れたところに買い出しに行くみたいな話もあるので、1キロ四方で0.2件(1/5キロに1件)と想定します。
山間部は人もいないのでコンビニはないと想定すると、
分類 | 割合 | コンビニ数/1平方キロあたり | 合計件数 |
都市部 | 5% | 2件 | 38000 |
田舎町 | 25% | 0.2件(5キロに1件) | 19000 |
山間部 | 70% | 0件(無人) | 0 |
この数を合計すると、コンビニの数は、5万7千店舗 と推定されます。
実際のコンビニの数は、2020年現在ほぼ上記の数字らしいので、偶然ですがかなり推定が正しかったようです。
答えは自分の中に(フェルミ推定を駆使してみる)
先の例で、日本の面積がわからなかった場合はどうするか、というと、2通りのやり方が考えられます。
方法1)わからないこと(この場合、日本の面積)もフェルミ推定で求めてしまう。
方法2)自分が知っている知識を使い、別の視点からフェルミ推定をする。
方法1だと、例えば僕ならこうします。
僕は出身がが仙台で、仙台―東京間が約700キロメートルという知識があります。
日本地図を頭に思い描くと、日本全体の長さはその5倍くらいありそうです。(南端の離島等は考えずに)
では、横幅はというと、日本は細長いので、仮に100キロと想定すると。
日本の面積は、 700キロメートル × 100キロメートル = 350000平方キロメートル という数字になります。
実際、仙台―東京の距離の7分の1よりは幅がありそうだ、ということで、150キロなら、525000平方キロメートル
いずれにせよ、推定としては桁は違わない程度の近い値が算出できます。
ちなみに、仙台―東京ではなくて、名古屋―東京間も約700キロメートルで、愛知に住んでいても同じように推定できますね。
方法2の場合、日本の面積で出さなくとも別の方法でも推定は可能です。
今までとは全く別の視点で、今度は、面積ではなくて、日本の人口をつかってみます。
人の数をつかうので、完全に別の視点で、コンビニとして存続するには平均してどの程度の売り上げが必要だろうか想像してみます。
1日10万円、10日で100万円程度。1つの案としてこのように想定してみます。
1日10万は、コンビニの本社側にある程度の費用を出す必要があることや家賃なども想定すると存続には必要と考えます。
次に10日で、100万円を売り上げるために、コンビニで何回買い物が必要かを考えます。
お客様1人あたりの単価を500円とすると、100万円 / 500円=2000回の買い物が必要となります。
さて、日本国民がコンビニで買い物をするといっても、年代によってコンビニに行く頻度はかわりそうです。
日本の全人口を1.2億人として計算してみると、
各年齢層でのコンビニに行く回数=全人口×人口割合×1人あたりのコンビニに行く回数で計算されます。
年齢層 | 人口割合 | 1人あたりのコンビニに行く回数(10日あたり) | コンビニに行く全ての回数 |
0-10歳 | 10% | 0 | 0 |
10-20歳 | 10% | 2 | 24百万回 |
20-40歳 | 20% | 2 | 72百万回 |
40-60歳 | 30% | 1 | 36百万回 |
60歳以上 | 20% | 0 | 0 |
全国民が10日間でコンビニに行く合計回数が、132百万回になり、これを2000回でわると、コンビニの件数が、6万6千店舗になります。
方法1にしても、方法2にしても、自分の知識がある分野で考察してなんらかの仮説を導き出すことが可能です。
現在はインターネットもあり、情報は検索することで回答を得られることが多くなっています。
ただしそれは、既存の情報、やり方に限り、新しいことを模索して挑戦するときには、世の中にも回答がないことがたくさんあります。
そういうときには、自分なりの推定を重ねることで、問題を解決し前に進んでいくことが可能になります。
その際の問題を解く方法として、フェルミ推定はきわめて有効な方法ですので、今回紹介させていただきました。
問題解決について
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